管理栄養士の主な勤務先と仕事内容

公開日: : 最終更新日:2015/06/20 ビジネス

病院

病院や診療所で働く管理栄養士は、病気の治療、再発防止、合併症予防を目指し、患者の症状や栄養状態に合わせた献立作りや栄養指導を行います。
通常は入院患者の食事管理が主となりますが、場合によっては、退院した患者や外来患者に対して栄養指導を行うこともあります。
内臓疾患をはじめとする病気の治療や、再発・合併症を防ぐ上で、個々に合った食事と栄養を管理することは非常に重要です。
病院での収入は安定しているので人気の高い勤務先ですが、医療に携わる者として、他の施設で働く管理栄養士以上に、豊富な知識と高度な技術が求められる職場でもあります。
また、患者に合わせた献立作りというのは想像以上に難しいものです。
患者の中には食事制限のある人もいますし、必要とする栄養は一人一人違うので、それぞれの食事内容をきちんと把握し、正確に管理しなければいけません。
さらに、食事は毎日3食、休みなく提供されるので、いつも同じメニューというわけにもいきません。
入院患者にとって食事は楽しみの一つですから、栄養ばかりでなく美味しく食べてもらえるかを考えることも重要になります。
長期的な食事療法を要する退院後の患者や外来患者の場合は、直接食事を管理することができないので、自宅で作りやすいメニューを考案し、どういった食生活が良いのかを具体的に分かりやすく説明する必要があります。
そして、医療の現場では新しい情報が次々に入ってくるため、医師や看護士と同様に管理栄養士にも講習会や勉強会があります。
日々進歩し続けている最新医療に追いつくために、仕事と勉強を並行して行わなければならないハードな職場と言えます。

介護施設

介護老人保健施設や介護老人福祉施設などの介護保険施設では、介護保険法の改正で栄養管理に重点を置き、常勤の管理栄養士が配置されるようになりました。
それに伴い、介護施設で働く管理栄養士の仕事内容も食事を提供する業務から、栄養を管理する業務へと変化しました。
以前は「食べ物を扱う仕事」が介護施設における管理栄養士とされていたのが、「食を通じて人と接する仕事」という考え方に変わったのです。
そのため、施設利用者一人一人に話を聞いたり、食事の様子を細かくチェックしながら栄養状態などを適切に評価し、それに応じた栄養ケア・マネジメントが求められます。
さらに、介護施設では多職種協働による栄養管理が求められるため、献立作りは管理栄養士だけでなく、介護スタッフや看護士と一緒に個人の栄養状態や体調を相談しながら行います。
また、高齢者を対象にした介護施設では、「噛む力が弱くなった」「上手く飲み込めない」「栄養をきちんと摂っているのに体重が減少している」など、様々なケースがあるので、個別に対応することも必要です。
その他、施設利用者に対して食べ方や水分の摂り方などを指導する講習会を開くこともあります。
このように、一人一人の食事の様子や体調の変化などを随時確認しながら栄養を管理しなければならないため、気の抜けない職場ですが、管理栄養士にとって施設は働く場であっても利用者にとっては生活する場であることを忘れてはいけません。
介護施設で働く管理栄養士は「食を通じて人と接する仕事」をしているわけですから、家庭の温かみを感じてもらえる食事を考えることも大切です。

委託給食会社

委託給食会社とは、給食施設から依頼を受けて管理栄養士や栄養士を派遣する会社のこと。
多数人に給食を提供している施設では近年、給食業務を直接運営するよりも外部の会社(委託給食会社)に委託しているところが多く、管理栄養士の就職先としても委託給食会社が大半を占めています。
委託給食会社で働く管理栄養士の給与や契約などについては会社の管轄となりますが、職場は給食施設であり、その施設の意向に沿った働きをしなければいけません。
派遣される施設によって仕事内容が多少異なる場合があるということです。
管理栄養士として栄養を考えた献立作りや給食管理が主な仕事ではありますが、施設ごとに給食に対する考え方や設備、予算などはそれぞれ違ってきます。
委託給食会社に所属する管理栄養士は、給食を食べる人の満足を得るだけでなく委託元の施設の要望に応えることも必要となるのです。
委託給食会社から派遣される主な職場には、病院や学校、福祉施設、学生寮、企業の社員食堂などがあります。
中でも最近増えつつあるのが企業の社員食堂です。
国民のメタボリックシンドロームや生活習慣病が増加傾向にあることを受けて会社内でも社員の健康管理に取り組むために社食を管理栄養士に任せる企業が増えてきています。
こういった企業では、肥満や病気などを予防する栄養バランスのとれた健康的な食事を提案するのはもちろんのこと、社員にとって憩いの場である食堂で、楽しみながら美味しく食べられる食事を考えることも管理栄養士の大切な役目です。

学校給食

幼稚園や保育園、小学校などで働く管理栄養士は、献立作りや調理指導といった学校給食の管理と同時に、子ども達が食に関する知識を身につけるための「食育」も行っています。
成長期に摂取する栄養は将来の健康を左右すると言っても過言ではありません。
そのため、成長に必要な栄養をバランスよく摂取できる給食を提供することが、主な仕事となりますが、子ども達にとって楽しみな時間の一つである給食を通じて食への関心を高め、食の大切さを教えていくことも管理栄養士の重要な役目です。
給食からだけでなく、その時間を利用して食に関する様々な指導を直接行ったり、管理栄養士が食育を行う時間を特別に設ける学校もあります。
また、地元で生産されたものをその地域で消費する「地産地消」の考えのもと、地元の食材を取り入れた学校給食が広がりつつあり、そういった活動にも管理栄養士が一役買っています。
近年は食物アレルギーを抱えている子どもが多いことから、アレルギー対応食を導入する学校も増え、栄養のスペシャリストである管理栄養士は、今や学校給食において必要不可欠な存在となっているのです。
さらに、2005年には「栄養教諭」という職が新たに設けられました。
栄養教諭の免許取得には管理栄養士の資格を持っていることが前提となり、主な仕事内容は、将来を健康に過ごすための正しい食事の摂り方の指導、食物アレルギーや肥満などの個別指導、食に関するカウンセリングなどがあります。
このように、学校給食に携わる管理栄養士には、学校や地域と連携し、さらなる食育の向上が求められています。

保健所・保健センター

保健所は広域的かつ専門的な保健サービス、保健センターは保健所よりも身近な地域密着型の保健サービスを行っています。
どちらも地域住民に向けた健康づくりのための支援や健診の他、栄養指導も実施しているため、それぞれに管理栄養士が配置されています。
保健所や保健センターは、収入などが安定していることから、管理栄養士に人気の職場ですが、公務員として働くことになるため、公務員試験を受けなければいけません。
また、保健所と保健センターでは仕事内容に違いがあります。

保健所

地域住民を対象とした栄養に関する個別相談や講習会、集団給食施設での献立作成や栄養指導、集団検診での栄養指導などが主な仕事です。
その他「国民栄養調査」を行ったり、医師や健康運動指導士などと協力して、健康づくりのためのイベントを企画することもあります。
国民栄養調査とは、国民の健康維持と病気予防を目的に制定された健康増進法に基づき、年に1回、全国およそ5000世帯を対象に体の状態や生活習慣を調査するもの。
今後の健康増進を図るための基礎資料として、生活習慣病対策に欠かせない調査です。

保健センター

保健センターで働く管理栄養士は、小さな子どもから高齢者まで、各ライフステージに応じた健康づくりをサポートしています。
母子保健事業をはじめとする子育て支援事業では、これから母親になる人に向けた母親学級で産前・産後の栄養を指導したり、出産後の健診などで離乳食のアドバイスなどを行います。
定期健診を受ける機会のない専業主婦や高齢者を対象とした健診では、異常が見られる人に栄養を指導したり、高齢者の健康相談なども行います。

外食産業

外食産業とは、簡単に言うと飲食店のことで、主にファミリーレストランやファストフード店を指します。
こういった外食産業のメニューは、全体的に味付けが濃いめでこってりとした油物が多く、カロリーも高いというイメージが強いため、健康を気遣う人にとってはなかなか足を運びにくい場所です。
メタボリックシンドロームや生活習慣病への対策が進み、国民の健康志向が高まっている近年では、ますます足が遠のいています。
そこで、外食産業でも体に優しいヘルシーメニューを提供するために、管理栄養士を募集する店舗が増えました。
最近では管理栄養士がメニューを考案していることをアピールするために、「管理栄養士がいるレストラン」というような看板を掲げている店も多く、これまでは栄養面が気になって外食を避けていた人にも人気となっています。
外食産業で働く管理栄養士は、栄養に関する豊富な専門知識を活かし、調理師と協力してメニューを作成することが主な仕事です。
どういった客層を狙っているかは店ごとに異なるため、各店舗のコンセプトに合わせたメニュー作りが求められます。
例えば、栄養が不足・偏りがちな人に向けた美味しくて栄養価の高いメニュー、塩分や糖分が制限されている病気療養中の人でも食事を楽しむことができるメニュー、美容を気遣う女性に向けた体の中からキレイになれるメニュー、ダイエット中に食べても安心なメニューなど、様々な要望に応えなければいけません。
外食産業は、管理栄養士としての能力がいかんなく発揮される場所であり、今後さらなる活躍が期待できる分野と言えます。

食品メーカー

食品関係の企業では、新製品の開発に管理栄養士が携わっています。
ここでの管理栄養士は、商品が市場へ出されるまでの間、他の部署の人たちと連携して様々な働きが要求されます。
食品メーカーの商品開発部というのは、その商品の売上を左右し、企業の利益に大きく影響することもある重要な部署です。
そこに属する管理栄養士にも、それ相応の能力や努力が求められており、専門知識に加えて、ヒットしている商品や料理をリサーチしたり食品の展示会に出向くなど、自ら積極的に行動し、常に市場のニーズを把握する必要があります。
最近では食品の産地や原材料を偽装するニュースが相次いだことで、消費者は栄養価や美味しさだけでなく、品質や安全性にも敏感になっています。
こういった傾向にあるときは、産地にこだわった安全な原材料が使われていることをアピールするなど、時代のニーズに合わせた商品を開発することが重要です。
また、企業で働く以上、コストを考慮することも忘れてはいけません。
具体的なコンセプトが決定したら今度は試作と試食を繰り返し、商品を形にしていきます。
そうして完成した後は、販売促進のためにその商品を使ったレシピを考案したり、会社によってはパッケージやキャッチコピーの会議に参加することもあれば、商品の特徴を伝えるために営業に同行することもあります。
このように、食品メーカーで働く管理栄養士は、市場調査から商品コンセプトの提案、営業に至るまで、多くの人と協力しながら幅広い仕事を行います。
仕事量も多く、様々な能力が求められますが、それだけやりがいを感じることのできる充実した職場と言えます。

スポーツ栄養士

スポーツ栄養士とは、スポーツの分野で栄養指導などを行う管理栄養士や栄養士のこと。
管理栄養士の仕事の中では非常に人気がありますが、就職口が限られているため倍率が高く、狭き門となっています。
また、スポーツ栄養士にはスポーツや病気、サプリメントなど栄養学以外にも幅広い専門知識が必要となり、管理栄養士の資格を持っているだけではなかなか採用されません。
そのため、ボランティア活動をしながら勉強を続けたり、病院などの他分野で経験を積んでからスポーツ栄養士を目指すケースが多いようです。
スポーツ栄養士の主な仕事は、以下の2つに分類されます。

スポーツ選手の栄養管理

トレーニングコーチやトレーナーと共にサポートスタッフの一員として栄養面からアスリートをサポートします。
体調管理や体力維持のために必要な栄養や食事を指導したり、食生活の問題点を指摘し、正しい食習慣を徹底させるミールトレーニングを行います。
トレーニングの時だけでなく、選手のプライベートな食事にも関わる場合があるため上手くコミュニケーションをとる必要があり、人間性が問われる仕事でもあります。

フィットネス施設での栄養指導

スポーツジムやフィットネスクラブの会員に対し、運動量に応じた効果的な食事や水分の摂り方などをアドバイスします。
最近では、スポーツ栄養士が運動と食事の指導を個別で行う特別プログラムを取り入れる施設も増えています。
現在、フィットネス施設で働く管理栄養士の数はあまり多くありませんが、健康志向の上昇でジムに通う人が増えていることに伴い、今後、スポーツ栄養士を必要とする施設が増加していくと見られます。

独立開業

施設や企業に就職する管理栄養士が多い中、資格を活かして独立開業する人がいます。
その中には、初めから独立して働くことを目指して資格を取得する人もいますが、通常は病院や食品メーカーなどで経験を積んでから独立するケースが多いようです。
開業管理栄養士の仕事は多種多様で、生活習慣病対策を目的とした料理教室、高齢者や食事療法中の人に向けた弁当の宅配サービス、食品会社のアドバイザー、栄養指導や健康相談を請け負う会社の設立、講演会の講師、在宅訪問栄養指導、栄養の専門家としてメディアに進出するなど、様々な分野で活躍しています。
在宅訪問栄養指導とは、自宅で介護を受けている高齢者や通院が困難な人の家に訪問し、食べ方のアドバイスや栄養指導を行う仕事です。
現在は主に病院や介護施設で働く管理栄養士が行っていますが、高齢化に伴い、訪問を必要とする人が今後さらに増えると見られるため、在宅訪問栄養指導を専門に請け負う開業管理栄養士が増えています。
その他、メニュー作りから調理まで全てを行い、「管理栄養士が手掛けるレストラン」として店を開く人もいます。
このように、仕事内容を好きに選び、自分のペースで働けるのが、独立開業のメリットですが、そのぶん他の管理栄養士以上の能力を要します。
第一に、会社を経営する能力が必要になりますし、仕事を取るためにはコミュニケーション能力も欠かせません。
また、料理教室やレストラン、弁当宅配サービスを始める人は、調理師免許やフードコーディネーターの資格も取得しています。
管理栄養士の資格だけでは、独立開業で成功するのは難しいようです。

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